城郭研究の第一人者である奈良大学の千田(せんだ)嘉博(よしひろ)教授(城郭考古学)が、城の構造から天下人らの実像や当時の社会変革に迫る『城郭考古学の冒険』(幻冬舎新書)を発刊した。同書には「奈良県では城を守り活(い)かす行政の取り組みが著しく遅れている」という厳しい指摘も。姫路城や安土城のような有名な城がない奈良にも、世界的な価値をもつ城があるという。本紙連載「お城探偵」でもおなじみの千田氏にその奥深さや課題について聞いた。(川西健士郎)
人類の城に普遍性
《(天守など)城の建物だけでなく、城が備えた堀や土塁・石垣などにも注目していくと、城の魅力は一気に広がる》
千田氏は同書でそう主張し、城郭の構造から世界と日本の城を比較する。
たとえば、織田信長や豊臣秀吉の居城が諸大名の手本となって広がった織豊(しょくほう)系城郭に見られる外枡形(そとますがた)や馬出しといった複雑な出入り口は、古代ローマ軍が築いた陣やモンゴルの11世紀ごろの城郭都市などに普遍的に見られるという。
「その構造は、防御と出撃のバランスに最もすぐれた最適解だった。織豊系城郭はわずか数十年という異例の速さで到達しており、世界史的に特筆される」と千田氏は話す。
高取城は「世界の城」
そうした観点から、すばらしい魅力を備えた日本の城の一番手に千田氏が挙げるのが、実は高取城(高取町)だ。