東京五輪・パラリンピックを機に、海外の代表選手らと地域が親交を深める「ホストタウン事業」。新型コロナウイルスの影響で、県内では21日までに選手団の事前合宿が計6市で中止または規模縮小となる中、受け入れを予定する自治体では感染症対策と国際交流の両立に苦慮しながら、実現に向けた対応を模索している。
「選手やスタッフから感染者を出さず、無事に過ごしてもらわなくてはいけない」―。モンゴルのホストタウンとして、パラ陸上の代表チームが事前合宿を開く予定の焼津市。オリンピック・パラリンピック推進室の小野田諭史主任主査は表情を引き締める。
当初は同国のレスリング代表など4チームが事前合宿を計画していたが、コロナ禍で調整が付かなくなった。職員たちは感染症の影響を案じながらも、受け入れマニュアルの作成に奔走する。感染防止のため、選手やスタッフは合宿期間中、宿泊先と練習場の往復しか認められない。市民と自由に触れ合うことは難しいが、大会終了後に選手たちの報告会を企画した。小野田主任主査は「ホストタウンの役割を全うするのは当然」と強調する。
7月中旬にかけて、フェンシングの五輪カナダ代表が事前合宿を計画する沼津市。市ウィズスポーツ課はチームをどのように歓迎するか知恵を絞る。担当者は五輪で生まれた絆を永続させるために、「市民が折った千羽鶴の贈呈など日本独特の文化を紹介しながら、選手の健闘や大会の無事を祈る気持ちが込められていることを伝えたい」と語る。
ブラジル選手団を受け入れる浜松市では、事前合宿に参加する五輪選手が半減し、パラ選手も規模縮小が濃厚な見通し。メンバーら約70人で市民ボランティアに参加する障害者福祉団体「こまたす推進プロジェクト」の佐藤光春代表理事(57)は「選手たちをもてなしたくても、近づけないのが残念。市民の応援メッセージ動画を作って練習会場で上映したらどうか」と提案する。
<メモ>ホストタウン 2020年東京五輪・パラリンピックに合わせ、国が地方自治体を財政支援し、大会参加国や地域との国際交流を通じて地域活性化を図る取り組み。4月27日時点で県内18市町を含む全国528自治体が登録する。選手団の事前合宿の受け入れを行う自治体も多い。パラリンピックの選手らとの交流を進める「共生社会ホストタウン」や、東日本大震災の被災自治体が交流する「復興ありがとうホストタウン」もある。