
環境破壊や地球温暖化という単語には、ある種の絶望感がつきまとうことが多い。一旦滅びた自然は二度と元には戻らないと思われがちだ。だが必ずしもそうではない。 地球の未来に一筋の光明を感じさせる調査結果が今、注目を集めている。
再生した森林の吸収する二酸化炭素量は米国の年間排出量とほぼ同じ
世界自然保護基金(WWF)ら合弁事業Trillion Treesは2000年以降、地球全体で1億4600万エーカーの森林が再生したと調査結果を発表した。この面積はフランス全体に匹敵する。また、この再生された森林は大気中から5.9 ギガトンもの二酸化炭素を吸収することが可能であり、これは米国が1年間で排出する量とほぼ同じである。 研究チームは、過去30年間以上の衛星から送信される映像データと地上における調査を解析。その結果、モンゴルの北部、ブラジルの大西洋岸、中央アフリカ、そしてカナダなどの地域で森林の再生が進んでいることが分かった。
なおも深刻な森林伐採がもたらす自然破壊
しかしながら、地球全体に目を向けると、依然として森林は急激に失われている。森林伐採が森林再生をはるかに上回るペースで進んでいるのだ。2000年以降、世界中で失われた森林の合計面積は9億5300万エーカー。こちらはインドの面積より大きい。 この研究の主要メンバーの一人でもあるWWFのウィリアム・ボールドウィン-カンテッロ氏は、声明の中で「私たちが危険な気候の変化を避け、失われた自然を取り戻すには、森林伐採をやめ、自然森林を再生させることを同時に行わないといけません」と提案。そして「人工的に植林された森林より、自然に再生された森林の方がはるかに安上がりで、かつ炭素が豊富で、生物多様性に優れていることが多いことはずっと以前から分かっていました。今回の研究は森林の再生がどこで、なぜ起こっているのかを明らかにしました。そしてそれは地球上の他の場所でも再現することが可能であることを教えてくれます」と述べ、「しかしこの森林の再生は当たり前と考えることはできません。森林伐採は再生より毎年何百万ヘクタールも上回っています」と訴えた。 この研究で森林が再生しつつあるとされた地域の中に、残念ながら日本は含まれていない。環境省は「2050年カーボンニュートラル」 を目標に掲げ、あと30年足らずで二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いてゼロを達成することを目指している。そのためにはエネルギー産業が二酸化炭素排出の削減に取り組むだけではなく、森林を再生する努力が国全体で取り組む必要がありそうだ。
角谷剛