来日したIOCコーツ氏の“知られたくない黒歴史” 欧米豪メディアの過去記事を探る 東京五輪(飯塚真紀子) – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース

来日したIOCコーツ氏の“知られたくない黒歴史” 欧米豪メディアの過去記事を探る 東京五輪(飯塚真紀子) – Yahoo!ニュース  Yahoo!ニュース…

 東京五輪の開催準備ために、IOC(国際オリンピック委員会)副会長でIOC調整委員会委員長のジョン・コーツ氏が来日した。コーツ氏は、先日、「緊急事態宣言下でも五輪を開催する」と明言し、国内外で大バッシングを浴びたが、そんなコーツ氏には“知られたくない黒歴史”がある。

 それは、2000年の五輪入札に関するエピソードだ。

 2000年の五輪開催地としては、シドニー、マンチェスター、北京、ベルリン、イスタンブール、ブラジリアが入札していた。当時、オーストラリアオリンピック委員会会長(現在もだが)でシドニー五輪入札チームのリーダーでもあったコーツ氏は、何としてもシドニーに五輪を招致したかった。ブリスベンやメルボルンを、それぞれ1992年と1996年の五輪に招致することに失敗していたからだ。

アフリカのIOC委員2名に計7万ドルをオファー

 そこで、コーツ氏は、シドニーに五輪を招致すべく、あの手この手で票を握っているIOC委員たちを接待した。IOC委員たちは入札した都市を訪問することができるが、コーツ氏は、IOC委員たちを、格安の航空運賃でシドニーに招待して高級ホテルに宿泊させたり、オーストラリア移住を望んでいたルーマニアのIOC委員の娘婿に職を斡旋したり、スイスのIOC委員の娘がシドニー大学に入学するのをアレンジしたり、モンゴルのIOC委員に馬を送ったりするなど様々な手を講じてIOC委員たちを喜ばせたという。

 遂には、コーツ氏は、開催地を決める最終投票を前に、アフリカのIOC委員2名にそれぞれ35,000ドルずつ、計7万ドルをオファーしたのである。しかも、そのお金が支払われるのは、シドニーが開催地に選ばれた場合という条件付きだった。

 さらには、オファーのタイミングにも驚かされる。それは1993年9月22日、五輪開催地を選考する最終投票日の前夜だったからだ。オファーは、モンテカルロのホテルで、ディナーを食べながら行われたという。

2票差で北京に勝つ

 オーストラリアのメディアによると、このディナーはコーツ氏にとって重要だった。

 2000年の五輪の候補地として最終的に絞られていたのはシドニーと北京だったが、当時、力を持っていたブラジルのIOC委員が北京の方に投票するようアフリカのIOC委員にロビー活動を行っており、北京が候補地に選ばれることが有力視されていたからだ。焦ったコーツ氏は、アフリカの2名のIOC委員にお金をオファーするという“最後のカード”を切ったわけである。

 その結果、どうなったか。翌日行われた最終投票では、45-43という2票差で、シドニーが北京から候補地を勝ち取った。当然のことながら、アフリカのIOC委員にお金のオファーをしたコーツ氏の“賄賂疑惑”が浮上する。

 “賄賂疑惑”に対し、コーツ氏は、記者会見で、シドニーが勝てなくなると感じたからお金をオファーしたことを認め、そのことは最終投票と関係があるかもしれないと、お金のオファーと投票結果の関係を肯定する発言をした。

賄賂ではない?

 どうみても賄賂にしかみえないお金のオファー。しかし、コーツ氏は、そのお金は賄賂には当たらないと主張した。

 お金はケニアやウガンダのIOC委員という個人に対してオファーしたものではないし、シドニー五輪の入札チームから直接オファーしたものでもない、お金はあくまでオーストラリアオリンピック委員会とケニアやウガンダのオリンピック委員会の間でやりとりされ、ケニアやウガンダのスポーツ振興のために使われるという理由からだ。各国のオリンピック委員会間で交わされるお金のやりとりは、IOCのガイドラインに沿ったもので、IOCのルールには違反していないと釈明したのである。

ケニアに支払われたお金は詳細不明

 IOCは各国のオリンピック委員会の間で交わされるやりとりを禁じていなかったが、問題は、ケニアとウガンダのIOC委員がお金を個人的に受け取っていなかったか、個人的な目的で使わなかったかどうかだった。

 個人的なお金の受け取りについては、ディナーの席で、コーツ氏に35,000ドルをオファーされた、当時のケニアオリンピック委員会会長のムコラ氏が、2002年の冬季五輪開催地候補のソルトレイクシティー五輪入札チームから個人的に34,650ドルを受け取っていたことがIOCの調査でわかり(本人は否定しているが)、1999年にIOCから追放された。

 また、オーストラリアオリンピック委員会のドキュメントによると、そのコムラ氏を通じてケニアオリンピック委員会に支払われたお金は“詳細不明のオリンピックスポーツプロジェクト”に割り当てられていたと、当時のNYタイムズが報じている。

ルールに抵触しないギリギリのことをする

 1999年に行われた、シドニー五輪の入札に関する独立調査では、賄賂や腐敗といった問題は見つからなかったが、調査報告には”IOCの曖昧なガイドラインを技術的には違反している”という注意書きもあったという。つまり、ガイドラインが曖昧で、実際にやっていることは違反ではないのかという見方だ。

 確かに、IOCの曖昧なルールに乗っ取れば、コーツ氏の対応は賄賂ではなかったという結論になるのかもしれないが、どう見ても賄賂にしか見えない。

 実際、LAタイムズによると、当時、オリンピックのスポンサー企業だったジョン・ハンコック・ファイナンシャル・サービスの社長はオーストラリアの新聞のコラムで「オーストラリアは賄賂で入札に勝った」と主張し、以下のように書いている。

「辞書によると、賄賂とは、不道徳なインセンティブを与えることにより、人の行動に影響を与える行為だ。シドニー五輪入札委員会のやり方はこの定義にとてもよく当てはまっている」

 百歩譲って、たとえそれが賄賂ではなかったとしても、このエピソードはコーツ氏が目的のためならルールに抵触しないギリギリのことをする策略家であること、そして、五輪がいかにお金中心に動いているかがよくわかる“黒歴史”と言えはしないか。

 コーツ氏自身、オーストラリアのメディアで、「最近ではそんなことをするのは許されない。しかし、私は、IOCのルール違反にはならないギリギリのことをした」と認めている。

 そして、そんなコーツ氏の監督の下、東京五輪が強行開催へと突き進んでいる状況を我々はどう受け止めるべきなのか、五輪開催まで40日を切った今、真剣に考える必要があるのではないか。

(参考記事)

‘Give and take’: How Sydney bent the rules to land the 2000 Olympics

Africa helped deliver Sydney the Olympics

OLYMPICS; I.O.C. Officials to Scrutinize Sydney Bid

World: Asia-Pacific Sydney sucked into Olympics scandal

An Aussie Bull in a China Shop

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(現代ビジネスの記事)

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