観客のいないスタジアムに、試合終了のホイッスルが鳴り響く。
日本の選手たちの喜びは、かなり控え目だった。6月15日に行なわれたキルギスとのカタールW杯アジア2次予選は、5対1の大勝に終わっている。この勝利で8戦全勝となった。
主力不在の中で「どうアピールするか」が問われた
U-24日本代表にオーバーエイジとして加わった吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航の3人に加え、冨安健洋と大迫勇也が不在だった。南野拓実はクラブ事情でチームを離れ、長友佑都、鎌田大地、伊東純也が温存された。
対戦相手のキルギスは、FIFAランキング99位の格下だ。しかも、6月7日にモンゴルと、同11日にミャンマーと戦ってきた。
日本も同じ日程で試合を消化してきたが、森保一監督は基本的にチームを2つに分けて交互に戦ってきた。11日のセルビア戦から守田英正が2試合連続で先発となっているが、チーム全体で疲労を分散してきたと言っていい。
何よりも、主力不在のなかで戦ってきた選手たちは、チームコンセプトを表現しながらアピールをする、という共通した目的を抱いている。
それだけに、5対1というスコアに拳を突き上げたりはしないのだ。3月のモンゴル戦や5月末のミャンマー戦のように2ケタ得点を記録しても、歓喜は弾けなかっただろう。結果を出して当然の試合であり、差し引いて考えるべきところは多い。
オナイウ阿道「大迫に次ぐ1トップの候補」へ
ただ、このレベルで自分の力を発揮できなければ、最終予選で戦力として計算できない。そう考えると、1トップで先発したオナイウ阿道は評価されるべきだ。
国際Aマッチデビューとなったセルビア戦で、オナイウは相手守備陣の圧力を受けながらも攻撃の起点となった。この日もポストプレーをこなしながら背後へ抜け出し、自らもシュートを狙っていく。27分からわずか6分でハットトリックを達成し、勝利への流れを作り出した。
先制点はPKだった。31分の2点目は、ボランチの川辺駿のアシストが絶妙だった。オナイウがらしさを見せたのは、33分の3点目だ。
CBの中谷進之介のタテパスをワンタッチで落とし、トップ下の原口元気が左サイドへ展開する。左サイドバックの小川諒也のクロスを、5バックの間に入り込んでヘディングで合わせた。大迫に次ぐ1トップの候補に名乗り出た一撃である。