モンゴルと聞いて多くの人が想起するのは、馬に乗った遊牧民たちが羊を放牧する牧歌的な緑の大草原でしょう。しかし、いまやモンゴルの人口の半分が首都ウランバートルに居住し、現代的な都市生活を送っています。クロ―バル化が進むこの都市では、高層ビルの建築が進み、街の中心部には高級ホテルやレストランが立ち並びます。
そうした煌びやかな都市文化の陰で、貧富の格差が拡大し、その日の暮らしにも困る人々が蠢いています。彼らが居住するのが「ゲル地区」と呼ばれるスラム街。ゲル地区に流入してくる食い詰めた遊牧民たちや仕事のない地方出身者たちを、ウランバートルの市民たちは犯罪の増加やモラルの低下をもたらす存在として見下します。そんなゲル地区に揺籃したのが「モンゴリアン・ヒップホップ」です。
Geeのすみか、ゲル地区について話そう
本物のラッパーたちだけの俺のすみか
洋服じゃくなくて知恵でおしゃれする俺たちのことをおまえらは理解できるのか?
泥棒たちだって誰が隣人かは知っている 泥棒にだって人情があるのさ
戦争映画じゃねえが、俺たちの現実の暮らしの中で、経験したこともいっぱいある
俺たち日焼けした者たちの地区に招かれずに行って、あわてんなよ
木の板の塀で囲われた細い通り道で拳を握って見張っているぞ(Gee “G-Khoroolol”)
今回のトークラウンジでは、『ヒップホップ・モンゴリア 韻がつむぐ人類学』を上梓した島村一平さんをお招きします。経済のグローバル化がもたらす貧富の拡大と、シャーマニズムや口承文芸といった伝統文化が交錯するなかで生まれた「モンゴリアン・ヒップホップ」についてお話を伺います。
島村一平(しまむら・いっぺい)
国立民族学博物館・超域フィールド科学研究部・准教授。文化人類学・モンゴル研究専攻。博士(文学)。1993年早稲田大学法学部を卒業後、ドキュメンタリー番組制作会社に就職。取材で訪れたモンゴルに魅了され制作会社を退社、モンゴルへ留学する。1998年モンゴル国立大学大学院修士課程修了。モンゴルにはのべ6年滞在した。とくにモンゴルのシャーマニズムをナショナリズムやエスニシティとの関連から研究してきた。その他の関心領域としては、モンゴル仏教のグローカルな実践、ポピュラー音楽、現代におけるチンギスハーンを巡る言説や表象など。2013年度日本学術振興会賞、地域研究コンソーシアム賞、2014年度大同生命地域研究奨励賞をそれぞれ受賞。
【日時等の詳細】
場所:Zoom
日時:4月28日20時~21時30分
料金:1100円(税込み) ※高校・大学・大学院生は無料です。
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