
【アジア映画の波 コロナ禍に挑む】 「映画は社会を映す鏡」といわれる。「大阪アジアン映画祭」は、日本で公開される機会が少ないアジアの最新作が上映されることも大きな魅力のひとつ。日本人が知らない文化や慣習など、アジア各国の“お国事情”を臨場感豊かに伝えてくれる。 モンゴルの新作『裸の電球』(ゾルジャルガル・プレブダシ監督)は、韓国へ出稼ぎに行った夫と離れ、モンゴルで幼い娘と暮らす若い母親の物語。 「現在、約4万人ものモンゴル人男性が韓国へ出稼ぎに出ている事実を知っていますか?」とプレブダシ監督は聞いてきた。 「家庭を守る女性も大変で離婚率は年々高まっています」。流暢(りゅうちょう)な日本語で現状を語る彼女は映画製作を学ぶため、日本の大学で留学していた。 「夫の帰りを待つ女性は皆、悩みを抱えているのに誰も口にしません。女性監督として、そんな彼女たちの心情を映画で訴えたかった。私も同じ境遇だったから。私の夫は2年間、日本へ出稼ぎに出ていました」と明かす。 モンゴル政府の奨学金を受け、「留学先に大好きな日本を選び」、帰国後は日本との架け橋として活躍。「最近はNHKのドキュメンタリーの助監督も務めた」と話す。 「モンゴルも日本と同様、ハリウッド映画が人気ですが、米大作と戦えるモンゴル映画を撮るのが夢です」と意欲を語る。 片や『竹で稼ぐ男たち』(シャヒーン・ディル・リアズ監督)はバングラデシュの社会派ドキュメンタリー。 同国で“国内最後の竹林”と呼ばれる山奥で竹を切り、いかだで組み、約300キロ下流へ運ぶ過酷な仕事に従事する労働者の姿を追う。 首都ダッカで生まれ、ドイツ留学で映画を学んだリアズ監督は現在、ベルリン在住 「この過酷な仕事が、今も残る現実を世界へ伝えたかった。今やバングラデシュの子供や若者でさえ、この現実を知りませんから…」 2人の気鋭監督は「映画で母国の現状を変えよう」と挑み続けている。(波多野康雅)