#愛は観光ではない(Love Is Not Tourism)―。こんなメッセージが今、インターネットで世界に広がっている。発信するのは、コロナ禍で各国が設ける入国制限によって引き裂かれた世界の恋人たち。結婚や出産などライフプランに影響が出ているカップルもおり、家族らに限定されている入国許可の拡大を求めて署名活動などに取り組んでいる。
京都市北区の会社員女性(37)は、5年間交際しているモンゴル人男性(28)と昨年1月を最後に会えていない。元々モンゴルと日本の遠距離恋愛だったが、年1回は女性が彼の元に会いに行っていた。チャットやテレビ電話で連絡を取り合うが、「いつになれば会えるのか、今後の見通しが立たないことが一番つらい。病気や事故など緊急時はどうすればよいのか」と嘆く。
女性は今年4月、制限中でも日本への入国が認められる配偶者ビザを取得するため、1人で婚姻届を提出した。「本来なら互いの親にきちんとあいさつし、2人で手続きしたかった。結婚した実感も幸せも今は感じられない」。ビザの申請は受理されたが、いつ結果が出るのか、入国に必要な手続きが無事進むのか、今後は不透明だ。
各国は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外国人の入国を規制している。日本も現在、全ての国・地域から外国人の新規入国を停止。ビジネス目的なら認めるなど制限を緩和していた時期もあったが、感染が再拡大する今、「特段の事情」として例外的に認められるのは日本人の配偶者や子など限定的だ。欧州の一部の国は婚姻関係のないパートナーの入国を認める方針を打ち出したが、外務省の担当者は「日本では戸籍などよりどころがないと難しい」と話す。
婚約者の韓国人男性(36)と1年半にわたり会えていない府内の公務員女性(26)は「ビジネスやオリンピック関連の入国は認めてきたのに、なぜ家族同然のパートナーはだめなのか」と憤る。精神的にも不安定になっているといい、「行動制限など条件付きで構わないので、入国対象を広げてほしい」と求める。
「#愛は観光ではない」はネット上の草の根運動として広がる一方、当事者らに「外国人を選んだのは自己責任」「立場をわきまえろ」などと批判的な反応が寄せられることもある。女性は「好きな人が偶然外国人だっただけで、会う手段の一切を国の政策で奪われた。直接触れ合い、話すことに勝るものはなく、それは家族も恋人も友人も同じでは」と強調する。会社員女性は「私たちの状況を知ってもらい、優しい気持ちで考えてみてほしい」と配慮を求めている。
読者から寄せられた情報を基に取材しました